Spirit of Fire企画

第六回 バイオハザード関連トイガン

 カプコンから発売されたゲーム「バイオハザード」については、プレイしたことはなくとも存在を知っている人は多いだろう。
 (特にエアーガンの世界にいる者には)
 ゲームそのものは、ホラー映画に多くのヒントを得て作られたもので、主人公がゾンビやクリーチャーと戦うものだ。
 このゲーム、主人公が警察官、軍などの関係者ということもあって多彩な銃火器が登場する。
 ゲームということもあって、多少の誇張やデフォルメはあるが、その扱いもそこそこ納得の行くものだった。
 このゲームには東京マルイが協力しており、その影響もあるのだろう。
 そして、その東京マルイはこのバイオハザードに関連した製品をこれまでいくつも出している。
 かなりの数の製品がある上にプレミアがついて評判になったものもあるので、ゲームに興味がなくともバイオハザードについて(あるいは関連商品について)知っている人も多いと思う。

 今回は、このバイオハザード関連のエアーガン、ガスガンについて紹介してみたい。
 特に、商品展開の意味について明らかにしていこう。

1.デザートイーグル50AE バイオハザード2モデル(6インチ)

 1998年、バイオハザード2に合わせて定価\22800で販売された、記念すべき一作目。
 従来マルイが販売していたガスブローバックのデザートイーグルのカスタム品で、シャドーステンレス仕上げ、ウッド調のグリップ(Raccoon Police のメダリオン付き。ラクーン・ポリスは舞台となる都市の警察)が特徴。
 なお、ゲームに登場するのはこんなデザインのデザートイーグルは登場していない。
 マルイはゲームに出てくる銃と製品化する銃にわざと違いを持たせている。
 特徴は「シャドーステンレス」と銘打った、黒みがかったメッキだろう。通常の商品展開にはメッキモデルがなかったのに、よくこんな商品を出せたものだ。
 またウッド調グリップは握りやすい形状に削り込んだもので、実用度もなかなか高い。
 欠点は軽いこと、そしてややオモチャっぽい、鋭さのないエッジ。しかしこれはカスタムベースのマルイのデザートイーグルがそうなのだからしょうがないか。

 この製品はかなり人気があり、マルイの広報の言を信用するなら10万円のプレミアがついたこともあるらしい(本当かどうかは知らないが)。
 しかし、実はこの製品は最も価格の変動が激しい。
 なぜかと言うと、限定であっても優に1000挺を越す数が存在しており、中古や購入者の流れによっては相場が激変するからだ。
 私がこれまで見た中で一番高いもので5万円あまり、一番低いもので15000円以下だった。商品の程度に関わらず、時期によってかなり相場が変わるというのが私の印象だ。高騰の原因はネットオークション(特にYahoo)によるところが大きい。
 やはりネットオークションというのは価格高騰を招きやすいもののようで、無駄に金を注ぎ込んでしまう人が多いようだ。
 ブラックホールで2万円で買えるこのデザートイーグルが同時期のヤフーオークションではなぜ3万円超なのかは理解に苦しむ(共に2002年時点での価格)

 そして、この製品の成功に味をしめたのか、マルイは以降何種もの限定製品を出していくことになる。

2.デザートイーグル50AE バイオハザード2モデル(10インチ) 

 1998年、バイオハザードのデュアルショック対応バージョンに合わせて定価\25800で発売された。
 木箱入り。10インチバレルモデルでフレームシルバーボディのデュアルトーン。刻印に「Umbrella Security Service 」とある。6インチ同様、ウッド調のグリップを採用している。
 このゲームの世界ではこの「アンブレラ」という会社(軍産複合体か?)がかなり大きな存在である。「Umbrella Security Service 」はそこの警備部門か子会社だろう。しかし警備会社が自社の刻印のデザートイーグルを使うだろうか?さすがに無理のある設定だ。
 なお、この銃の紹介ではしばしば「ゲーム中に登場する」と書かれているが、こんなデザインのものは出てこない(普通の10インチモデルなら登場するが)
 この辺の事情は6インチのものと同じだ。限定品ゆえに高級感と独自性ある商品にしたのはいいが、ゲーム中の銃との関連は薄い。

 見た目のせいだろうか、これは6インチモデルほどプレミアがつかない。オールシルバーのステンレスモデルのようなインパクトが無いせいか?
 プレミアが6インチモデルほどつかないと言っても、発売まもなく店頭からは売り切れ、中古市場では定価以上で売買されることも多いので、商品としては成功と言って良いだろう。


 デザートイーグルがゲーム中に登場したとは言え、6インチ・10インチモデルのカスタムはゲーム世界とは関連が薄いものだった。
 単純な記念モデルとしてならそれでいいが、やはり「ゲーム中に登場する銃がエアガンに」というコンセプトのほうが魅力的だ。少なくともマルイはそう思ったようだ。この後、マルイはゲーム中に登場する銃と限定カスタムとをより密接にリンクさせる道を進むこととなる。

3.サムライエッジシリーズの始まり-ジル・バレンタインモデル-

 1999年、バイオハザード3に合わせて定価\19800で販売されたのがベレッタM92FSのカスタム「サムライエッジ」だ。
 設定では、ジョウ・ケンドなる人物がラクーンシティ警察の特殊部隊S.T.A.R.S.のために作ったカスタムということになっている。
 ゲーム中にもこの銃そのものが登場しており、「ゲーム中に登場する銃がエアガンに」というコンセプトが完全に実現した。
 カスタムとしては、ブリガディア・スライドに独特の刻印とグリップを備えたもので、タクティカルな雰囲気を出している。
 しかし、パーティングラインは消されておらず、しかもグリップの色彩がおもちゃっぽい。
 ガスガンとしての実用度は高いが、見た目は今ひとつであった。
 そのためだろうか、これは先のデザートイーグルなどよりも売れ残っている期間が長かったような気がする。
 プレミアがつき出したのも、発売後2〜3年経ってからだ。

 このモデルはこれまでのバイオ関連トイガンと違ってゲーム中に明確に説明がある。
 バイオハザード3中に登場する「ケンド銃砲店からのFAX」には以下のように書かれている。

S.T.A.R.S.のやんちゃ坊主達へ

兄のジョウからうれしい知らせだ。ついに新制式ハンドガンが完成した。
M92F S.T.A.R.S.スペシャル「サムライエッジ」と名付けたそうだ。
数あるケンド製カスタムガンの中でも最高のバランスに仕上がっているぞ。
ジョウがいうには「これだけのガンでマトをはずす野郎がいたら、おしゃぶりでもホルスターに入れておけ」とさ。

なお細かい仕様については納入時に添付しておく。官給品とは思えないパーツのよさだ。出資してくれる企業にキスをしてやりたくなるぞ。

ケンド銃砲店 ロバート・ケンド

 この説明を見ても分かるように、設定ではSTARSの隊員全員がこのベレッタを持っている事になる。
 だが、ここで登場したのはジル・バレンタイン専用モデルのみ…このことから
 マルイが他のバージョンのサムライエッジを出すであろうことは、当時から噂されていた。
 そして、この噂は間もなく現実のものとなった。

3.サムライエッジ-クリス・レッドフィールドモデル-

 2000年、今度はサムライ・エッジのバージョンとして、射撃の名手クリス・レッドフィールド専用モデルが販売された。
 定価は前作と同じで、艶消しのブルーフィニッシュ調のスライド(でも製品を見ると他のものと変わらないようだが…)、シルバーメッキのトリガー、ロングスライドストップを採用している点が大きな違いだ。
 なお、このモデルは単純に「サムライエッジ改」とも呼ばれる。

 いつの時点で各隊員のサムライエッジの設定が決まったかどうかは定かではないが、取りあえずこの時点ではゲームの主役二人のものは登場した。
 実際のところ、この二つのモデルは大した違いはない。
 限定品のわりには…という玩具っぽい仕上げもそのままだ。もうちょっと高級感のある外観にできなかったのだろうか。

4.サムライエッジ改03-バリー・バートンモデル-

 2001年、 バイオハザードシリーズ5周年記念として、定価 \25800でバリー・バートンモデルが発売された。
 ここに至って、ようやくマルイの(というかイメージ作成としてはカプコンと協同なわけだが)設定も固まった。
 最初に出たサムライエッジをジル・バレンタインモデルとし、その他の隊員も専用モデルを作ってもらったことにしたのだ。
 このモデルだけM96ベースのカスタムという設定で、コンプ、アンダーマウントレール、エクステンデッドマガジンを備えた大型のモデルだ。
 またアルミケースがついており、このケースだけでも価値があると言える。
 しかし相変わらず軽く、パーティングラインは消されていない…。

 なお、このバリーモデルはゲームキューブ版バイオハザードで一定条件を満たすと使えるようになる。
 このゲーム中のバリーモデルは3連バーストできる…ってそれじゃM93Rだろう!
 わざとなのかは不明だが、ゲームとトイガンではかなり違うものになっていたのであった。

5.サムライエッジ・スタンダード

 とうとうマルイは2002年にサムライエッジを限定ではない通常商品として売ることとなった。
 ここに至ってようやくサムライエッジを巡る設定も決定されたようである(というか商品化と合わせて設定を作ったのかもしれないが)。
 最終的に固まった設定はサムライエッジ・スタンダードの紹介にあるので読んでほしい。
 バリーモデル発売後に登場した限定ではないサムライエッジ・スタンダードによってこれまでの設定が補強されている。
 ここで、専用モデルがあるのはテスト運用に関わった4名だけであることが明らかになった。この情報が出るまでは隊員12人分それぞれのカスタムがあるという噂まであったのだが……。ここで各人のサムライエッジの設定を見てみよう。

ジル・バレンタイン専用モデル
爆弾処理のエキスパートである"ジル・バレンタイン"は、最前線で銃撃戦を行うよりも、諜報活動・特殊工作を行う機会が多く、ハンドガンはバックアップのために腰の後ろのホルスターに入れていることが多く、銃を抜く場合に服に引っかかることを嫌い、スライドストップは小型化されている。またメダリオンのカラーがジルのパーソナルカラーである「ライトブルー」に変更されている。

クリス・レッドフィールド専用モデル
アルファチームのエース"クリス・レッドフィールド"は、S.T.A.R.S.一の射撃技術を誇る。数多くの射撃大会のタイトルを持つ彼の銃に対する要求は厳しく、カスタムを依頼するにあたっても、最高の精度と操作性を要求している。見た目も美しいシルバーメッキ仕上げのトリガーは、適度な滑りが絶妙のトリガー操作を可能にし、どんな状況においてもターゲットを確実にヒットする。スライドはより高い精度を追及した硬質スチール製に交換されており、コーティングの厚みによる、寸法変化をさけるために、「ブルーフィニッシュ」が施される。さらに、「ツヤ消し」をすることで、外光の反射を抑え、隠密接敵を可能にした。

バリー・バートン専用モデル
とにかく「大口径の銃、ハイパワー」にこだわる"バリー・バートン"は、「9mm×19mm弾」よりさらに強力な「.40S&W弾」をチョイス。しかも強化弾「+P」の使用に耐えるようにカスタムを依頼した。発射時の強烈なリコイルショックを和らげるために、バレル先端には4ポートの穴が開く「大型コンペンセイター」と、「スタビライザー」を装着。スタビライザー下部には、「ウェーバーサイズ」のマウントレールを配し「レーザーサイト」や「フラッシュライト」などの各種モジュールを装着可能にしている。マガジンも.40S&W弾のケースサイズに合わせ延長されている。

アルバート・ウェスカー専用モデル
「S.T.A.R.S.」のリーダーである"アルバート・ウェスカー"はアンブレラ社秘密工作員という、ふたつの顔を持つ男である。頭脳派の彼は直接的な戦闘よりも隠密行動を得意とし、そのためのカスタムをジョウ・ケンドに依頼した。超鋼ジュラルミンから削り出されたフレームは「レーザーサイト&フラッシュライト」モジュール装着用のレールを一体型にし、スクエアータイプトリガーガード、ビーバーテイル、グリップのチェッカリング、シルバーカラーなど、豪華な特別仕様となっている。サイレンサーはフレームマウントタイプで消音効果の高い大容量のものを使用し、ワンタッチで装着が行えフレームからダイレクトに固定出来る。これは、バレルに直接取り付けるタイプよりもショートリコイルにブレーキをかけないため、命中率が悪くならないのである。

 ――結局、錯綜した設定は錯綜したままだ。
 ゲーム中のFAXからすると、サムライエッジの支給には企業(おそらくアンブレラ社)が資金を出している。
 しかし、そのサムライエッジとトライアルで争ったのはアンブレラ社の銃なのだ。話として整合性がとれていない。
 そもそも、どこの警察がこんな高級カスタムを持たせるだろう(1000ドル以上は絶対にする)。官給品というのはさすがに無理がなかっただろうか…。

 なお、上記4つのカスタムのうちウェスカー・モデルは発売されていない(噂だけはあった)。
 やはり悪役の銃では売れないからか、それともかなり手のかかるカスタムのためにコストがかかると判断したのか。
 ともあれ、こうして設定は完全に固まった。さすがにこれ以上設定改変はないだろう。今後のゲームの展開にもよるだろうが、今度出るのはサムライエッジではないかもしれない。個人的にはウェスカーモデルは出て欲しいのだが……。


6.アシュフォード・ゴールドルガー

 2001年、マルイは「バイオハザード コード:ベロニカ」に登場した黄金のルガーをエアコッキングガンとして発売した。
 これを見た者は誰もが思ったのではないだろうか。「正気か、マルイ」と…。
 どう考えても売れるはずがない商品だったのだ。ベースは過去のエアコッキングのルガーP08の焼き直しで、マガジンはいわゆる割り箸マガジン。
 まずエアコッキングという時点でガスガンよりもプレイバリューは落ちる。その上見た目がかなり安っぽい。
 アシュフォードルガーはゲーリングルガーに似たカスタムなのだが、エアガンとしてはどう見てもイロモノだ。マルシンがかつて出したモデルガンのゲーリングルガーくらい綺麗に作れば話は別だが。
 しかもマルイらしくオモチャっぽい外観で、これで定価\9980は高い。
 購入者は応募すれば期間限定でこのルガーを飾るレリーフも購入できたのだが、これも安っぽい作りで……売れなかったのも当然だろう。2002年夏の時点で大概のショップで買うことが出来る。
 何を勘違いしたのか、高額な価格でネットオークションに出している人が今もいて、笑いと涙を誘う。

 マルイは結局、限定でゲーム中の銃を出せば売れると勘違いしたのだろうか?それともネタに困ったのだろうか?
 この商品は「いかに限定でも売れないものは売れない」ということを証明してしまった。

 アシュフォード・ゴールドルガー以降、マルイはこの手の限定品を出していない。
 ゲームに登場する銃器と自社製品の兼ね合いから考えても、そうそう出せないのだろう。無理に出そうとすると、アシュフォードルガーのように失敗する。
 今後登場するのはどんな製品なのか。もうこのような商品展開はないのか……。
 購入者を満足させてくれるように、今までよりもさらに考えられた製品を出して欲しいものだ。


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