HOME/前ページへ戻ります

米海兵隊DET-1のKimber Custom

 MAR DET-1(Marine Corps Special Operations Command Detachment 1)とは、海兵隊から選抜された86名からなるSOCOM下の特殊部隊である。長期間、外国内での防衛、暴動対策などテロ対策を中心に行う。
 活動開始は2003年6月。その後、約2年間の試験運用期間を経て、その結果で存続か解体かを決定する。

 このDET-1がKimberのカスタムピストルを採用した、というニュースは2002年には情報が流れていた。
 この拳銃について取材したPat Rogers氏(特殊部隊、それも装備関連の記事で有名)、それにこの拳銃のグリップを担当したRob Simonich氏(カスタムナイフ、グリップメーカー。2003年11月に事故死された)が詳細な情報をアメリカのフォーラムで提供したためである。
 そこで、ここでは彼らが提供した情報とその後公開された情報を整理し、その拳銃の全貌に迫りたい。

1. Kimber ICQB Pistolへの道

 DET-1創設が決定してから必要となったのは新しい装備類であった。旧来の装備に更新されていないものがあり、また新しい部隊に新しい装備を採用するのもごく自然なことだと思われる。
 新装備の一つがStrider社のSMF "MARSOC"であり、同社のフォールディングナイフSnGを一割ほど大型化したものである。

 拳銃についても検討が行われ、当初はMEU(SOC)ピストル改良型がロバート・コーツ大佐より望まれたが、短期間で利用できるようになるものではなかった。Marine Corps SolutionはM9ピストルの採用を示唆したが、耐久性・信頼性・エルゴノミクス・口径の点で要求を満たすものではなく、採用とはならなかった。
 そこで、早急にそろえることができるInterm CQB pistol(暫定近接戦用拳銃)を決定し、これをもって改良型MEU(SOC)ピストルが揃うまでの拳銃とすることにしたのである。

 西海岸の海兵隊では、SOTG (Special Operations Training Group)における射撃技術の習熟について、LAPD(Los Angeles Police Department) SWATと密接な関係にある。
 そして、多くのマニアは既にご存知のことだろうが、LAPD SWATは2002年にKimberのTLE IIを採用している。このLAPDの決定がDET-1の採用にも影響したとされている。そして、Kimberのクラシック・カスタムが最もDET-1の要求に近いとみなされた。拳銃そのものの性能もあるが、何よりKimberの対応能力がこの緊急性のある問題の解決に適しているとされたようだ。

2.仕様

 Kimber社のクラシック・カスタムを元として、DET-1から改良点が提示された。その仕様は以下の通り。

・1911カスタムであること
・サプレッサーは必要ない
・Series 1ピストルであること。パッシブ・セイフティ(ファイアリングピンブロック)は必要ない
・スライドの前後にセレーションがあること
・リアサイトはNovakローマウント
・フロントサイトはドーブテイルで、トリチウムインサート。
・標準のガイドロッド(フルレングスのガイドロッドは全く必要ない)
・サイトは25ヤードで合うようにセッティングすること
・マガジンウェルを面取りすること
・ランヤードループを備えたフラット・メインスプリングハウジングとすること
・メモリーパッドつきのハイ・ビバーテイル・グリップセイフティを備えていること
・アンビデクストラス・サムセイフティであること(右利き・左利き両方に対応する必要があるため)
・スタンダード・マガジンリリースであること
・パックマイヤーGM-45CSグリップを装着すること(これはRob SimonichとStrider knivesが作るGunner Gripに置き換えられる)
・表面処理はMIL-STD-171に従って燐酸マンガン処理
・25ヤードからM1911 ballで撃った場合の集弾が最低でも4インチを超えないこと
・トリガープルは5lbs. +/- 1lbs.(5lbs.は約2.27kg)(軽いトリガーはそれだけトリガーの寿命を縮めるものであるため)
・オーバーホールなしで5万発の発射に耐えること
・刻印はMIL-STD-130に適合し、米国国有物であることを示すこと
・シリアルナンバーはDET独自のものとする

 この拳銃に用いるマガジンはWilsonの#47。MEU(SOC)ピストルでも採用され、1986年から海兵隊で用いられ続けているマガジンである。

 このほか、ICQB Pistolの特徴として、レールを備えていることが挙げられる。当時、Kimberはレール付きフレームを製造していなかったため、後付けのレールが装備された。Dawson Precision社によるレールがフレームにネジ止めされている。同社はSV社やSTI社のレースガンのカスタムで知られているが、こうした後加工も行っている。
 レールに装着されるのはSurefire社の6ボルト、防水ライトで軍用専門モデル。このライトを装着した状態で常に用いるため、ホルスターもそれに対応したサファリランド社の6004が選ばれた。しかしこれはICQB Pistolとこのライトの組み合わせに対応できなかったため、新たに6004-538-521(右利き用。左利き用は末尾が-522)がサファリランド社により提供された。

・パーツ構成

 これまでの記述で分かるとおり、おおよそのパーツはKimber社純正のパーツである。細かいパーツリストは1911 ForumにおいてPat Rogers氏が書いているので、それをあげてみよう。現物の写真を見ながら読まれると分かりやすいと思われる。

http://www.rogersprecision.com/id15.html(各アングルからの写真)

・フレーム・スライド : Kimber社Series I Custom Classic 5インチバレルモデル用
・バレル、バレルブッシング : Kimber社製。バレルはSeries II用ローデッドチェンバーインジケーター付き
・リコイルスプリングガイドロッド : Kimber社製標準長ガイドロッド
・サムセイフティ、マガジンリリース、スライドストップ、ハンマーディスコネクター、シアー : Kimber社製
・グリップセイフティ : Ed Brown社製ハードコアグリップセイフティ(メモリーバンプ付き)
・メインスプリングハウジング : Smith & Alexander社製ランヤードループ付きメインスプリングハウジング
・グリップ : Simonich Gunner Grips (コヨーテ・ブラウン色。ただし、前掲URLの写真ではパックマイヤー社GM-45CS)
・サイト : Novak Night Sights(前後とも)
・レール : Dawson Precision社製インテグラルレール

 これに加えて、フレームには"Det 1 XXXXX"そして"U. S. Government Property USMC"の刻印が入れられ、バレルにはプルーフマークと刻印表示として"cal. 45 NDT"と入れられている。バレル刻印はMEU(SOC)ピストルでも同じものがなされている。

・雑感

 Kimber ICQB Pistolに求められたものは、何をさておき信頼性である。多様な環境で活動するDETのような特殊部隊にとって「非現実的な精度は必要ない」(Pat Rogers)とされている。タイトできっちりした作りよりも、ある程度の余裕があり、作動不良の起きない拳銃が求められるのだ。
 ICQB Pistolはテストで2挺のみ、排莢でのトラブルが発生した。これは通常使うWilson #47(7発)ではなく8発マガジンを用いたために起きたものだ。これが大きな問題とは言えないだろう。ともかく、「暫定」とされていながらもその信頼性はかなり高いものとなっている。
 MEU(SOC)ピストルがこれまで海兵隊のフォース・リコンに必要な数が揃えられたことはないのだ。今後、改良型が支給されても恐らく数は足りないであろう。よって、かなりの間このKimber ICQB Pistolが活躍しなければならない可能性があるのだ。そして、緊急に揃えられた拳銃とは言え、サイドアームとして求められた能力は全て備えている。
 必要な時、必要なだけ存在し兵士の役に立つ――Kimber ICQB Pistolはそうした兵器としての基本的な要求を満たすものだと言える。

参考文献:

1) Rogers, Patrick A. "MARINES' NEW MCSOCOM PISTOL : KIMBER'S INTERIM CQB PISTOL". S. W. A. T Magazine. December, 2003. p. 52-57 (1995)
2) 1911 Forum



2004-05-01 追記

 Kimber ICQB Pistolについて「Visier」誌2004年4月号で記事が書かれ、それが頑住吉さんのサイトで詳しく紹介された。
http://www.h5.dion.ne.jp/~gun357/kimber.htm
 こちらの記事のほうが後に出たぶん、その後の状況に沿ったものとなっている。
 グリップセイフティの変更の経緯といったこちらの記事では分からない情報が紹介されているので、この拳銃に興味がある方は参照されたし。

2004-05-28 追記
 縁あってここで紹介したGunner gripを入手することができた。Gunner gripのレビュー

HOME/前ページへ戻ります
inserted by FC2 system